2015/06/24 08:25:25
馬券の所得
いわゆる馬券の払戻金の取扱いをめぐる争い(刑事事件)で、最高裁が今年3月、馬券の払戻金が雑所得に該当する場合もある旨の最終判断を下したことを受け、国税庁はこのほど、一時所得を例示した所得税基本通達34−1を改正し、今後の取扱いを明らかにしました。
改正通達は最高裁の判決内容に沿ったもので、これまで一時所得として取り扱ってきた競馬の馬券、競輪の車券の払戻金等から、「営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く」と明記しています。その上で、馬券を継続的に購入するソフトを使用して独自の条件設定と計算式に基づき、インターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして払戻金による多額の利益を上げ、一連の馬券購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかな場合は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する旨を、注書きに明示しました。つまり、これ以外はこれまでどおり、一時所得として取り扱われます。
今回の改正は法令解釈の変更に当たるため、同様のケースであれば、過納となっている所得税の還付請求が可能となります。ただ、その際には、最高裁判決と同様の購入行為の態様や規模等によるものである旨、また、外れ馬券に係る金額等が分かる書類の提出が求められます。この点にはくれぐれも留意すべきでしょう。
最近、度々、裁判所の判決で、税の取扱いが変わっています。税法改正の一つの方法を明示してくれています。
2015/05/27 09:29:03
相続税の申告要非判定コ−ナ−
国税庁は、平成27年1月の相続等から基礎控除額が減額されることによる相続税の課税対象者の増加に備え、「相続税の申告要否判定コーナー」を5月11日、ホームページ上に公開しました。既存の「確定申告書等作成コーナー」のようにインターネット上で自動計算できるシステムですが、遺産分割に左右される小規模宅地等特例や配偶者の税額軽減特例には対応していません。両特例の適用記載例は7月以降に公表を予定しています。
国税庁が開発した判定コーナーは、相続財産の金額あるいは評価額などを入力することで、相続税の申告が必要か否かを大まかに判定できるものです。申告書の作成には結びつかないため、現時点では実務に直結するものではないですが、国税庁担当者によると、「「相続税についてのお尋ね」が届いた納税者は、このコーナーで計算した結果をプリントして税務署への回答に利用していただきたい」と補足する。
判定コーナーの手順を確認すると、(1)法定相続人の数を入力、(2)相続財産(土地等・建物・有価証券・現金・預貯金・生命保険金等・死亡退職金等・その他の財産・相続時精算課税適用財産)の金額等を入力、(3)債務及び葬式費用を入力、(4)相続開始前3年以内の贈与財産の金額等を入力――することで、自動的に加減算し、申告が必要かどうかの結果を示す仕組みです。
相続税がより身近になっていますね。
2015/04/24 09:57:10
国外転出時課税
国外転出時課税は平成27年度税制改正で創設された新制度ですが、平成27年7月1日以後に日本から国外転出等する場合に適用されます。1億円以上の有価証券や未決済の信用取引等を所有する場合に対象となるため、このほど公表された「国外転出時課税制度(FAQ)」において、その対象範囲を確認しておく必要があります。
注意したいのは、文字どおりの国外転出は当然として、それ以外にも、国外に居住する親族(非居住者)へ対象となる資産を一部又は全部、贈与したり、相続・遺贈する場合も含まれる点です。非居住者への贈与であれば贈与者が含み益に対する所得税の確定申告をすることになり、非居住者が相続した場合は、国内居住者の相続人が含み益に対する所得税の準確定申告をする必要が出てきます(「FAQ」Q1)。
申告が必要となるのは、(1)国外転出時に対象となる資産を合計1億円以上保有し、かつ(2)国外転出の日前10年以内に国内在住期間が5年超――を満たすケース。外交等の在留資格に基づく在留期間は国内在住期間に含めません。対象資産に含み益があるか否かは、申告の有無に関係ないので注意したいです。対象資産は、有価証券や匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引等です(同Q3、4)。1億円以下か否かは国外転出時に評価して判定するが、平成27年12月末までは譲渡所得が非課税の国債や地方債も対象資産に含めて計算する点にも注意したいです。
国外に出国して悠々の老後計画などは、どうなるのでしょうか。
2015/02/26 14:19:47
個人型確定拠出年金の加入者拡大など(専業主婦も)
平成27年度税制改正では、通常国会に提出予定の確定拠出年金法の改正を前提に、個人型確定拠出年金(個人型DC)の加入者拡大等を受けた税制措置が盛り込まれています。
DCは加入者自身が運用する年金制度で、(1)掛金を企業が拠出する企業型、(2)企業型を導入しない企業の従業員や自営業者など個人が拠出する個人型の2つがあり、昨年3月末時点の加入者は、企業型が464万人、個人型が18万人(厚生労働省統計)。税制面では、拠出限度額まで企業の掛金は全額損金算入、加入者個人の掛金は小規模企業共済等掛金として全額所得控除されます。確定拠出年金法の改正案では、個人型DCの加入対象者として、新たに、企業年金加入者や公務員等共済加入者、専業主婦等の第3号被保険者が加えられ、誰もが利用できる制度になります。
これを受け平成27年度税制改正では、個人型DCに加入できる場合の非課税拠出限度額(年額)について、(1)企業型DC加入者で他に企業年金がない場合は24万円(企業年金がある場合は14.4万円)、(2)確定給付型年金のみ加入者と公務員等共済加入者は14.4万円、(3)専業主婦等の第3号被保険者は27.6万円となります。
一方、小規模事業主掛金納付制度は、企業型DCを導入する余裕のない小規模事業主に配慮したものです。従業員が個人型DCに加入する際に拠出限度額の範囲内で小規模企業事業主が拠出した掛金の損金算入が認められます。また、従業員についても給与所得に係る収入金額に含まれないことになります。
いろいろな方が、利用できそうです。
2014/11/27 11:00:46
販売員(マネキン)に支払った金員の消費税?
国税不服審判所がこのほど公表した裁決事例によれば、請求人X社が販売員に支払った金員が消費税の処理上「給与」に該当するか否かをめぐる争いで、X社の主張を棄却する裁決が下されたことが明らかになりました(平成26年2月17日裁決)。
X社は百貨店の物産展で弁当の調理・販売を行う法人であり、職業紹介事業者等を介して手配した弁当の販売員(いわゆるマネキン)を使用していた。X社は、(1)販売員は販売のプロであり、(2)販売業務に必要なエプロン等は各自用意していたこと、(3)各販売員は他者をして代わりに販売に当たらせることができること、さらに(4)X社は業務委託契約を締結する意思があったこと――などから、このような紹介所から派遣された労働者に対して支払った金員は「給与」には該当せず、消費税の処理上仕入税額控除が行えると主張しました。
これに対し審判所は、給与とは「雇用契約又はこれに類する原因に基づき、自己の危険と計算によることなく、使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として受ける給付」をいうものとされ、本件の場合は、各販売員がX社から時間的な拘束を受け、役務の提供の代替が認められていなかったことなどを考慮すれば、いずれも雇用契約に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として支給されたものと認められ、給与に該当すると判断しました。
これは、一定の派遣等の場合についても、気をつける必要がありそうです。