2021/07/19 11:13:26
コロナ禍における所得税等の申告状況
国税庁がこのほど公表した令和2年分所得税等の確定申告状況によると、申告者数や所得金額は増加したものの、コロナ禍により、申告税額は前年に続いて減少になったこと、納税者本人が自宅からe−Tax送信による申告が大幅に増加したことが分かりました。新型コロナウイルス感染症のまん延・拡大に伴い2年連続で申告期限が1か月延長されたことから、4月末までの申告書提出分が含まれています。
令和2年分の所得税の確定申告書提出者は2,249万人(前年比2.1%増)、うち申告納税額のある人は657万人(同4.3%増)で、申告所得金額は42兆5,497億円(同2.2%増)となりました。ただし、申告納税額をみるとコロナ禍における地価下落に伴う土地等の譲渡所得の減少や緊急事態宣言における自粛要請などによる所得の減少から3兆1,653億円と1.6%前年を下回り、2年連続減少しました。そんな中、雑所得については、社員に副業を認める企業も増えたことなどから8兆2,922億円と6.1%増加し、その申告納税額は657億円と21.4%も大幅に伸びています。
また、コロナ禍もあり、納税者本人の自宅からのe−Taxが320万7,000人へと大きく伸び、税務署申告会場におけるe−Tax利用者の323万2,000人と拮抗しました。外出自粛を背景に、5年前は確定申告者の2%程度だったのが、令和元年分は8.4%、2年分は14.3%と飛躍的に伸びました。当局が思い描いていた税務署会場でe−Taxに慣れてもらい、翌年には自宅からという導線が実現しつつあります。スマートフォンを利用した申告件数も飛躍的に伸び、e−Taxによる送信は倍増の101万8,000人と100万人を突破しました。
コロナ禍により自宅からの電子申告やスマートフォンを利用した電子申告が増加したようです。ますます行政の電子化が進みそうです。
2021/07/07 15:33:23
新型コロナ対策の実質無利子・無担保融資は年末まで継続
経済産業省はこのほど、新型コロナウイルス感染症により影響を受けた事業者に対して、政府系金融機関(日本政策金融公庫及び商工中金)が行っている実質無利子・無担保融資の施策について、昨年12月の経済対策で「当面今年前半まで」としていた申込期限を「当面年末まで継続」することを明らかにしました。
政府系金融機関による実質無利子・無担保融資は、新型コロナウイルス感染症の影響により、最近1か月間の売上高が前3年のいずれかの年の同期と比較して一定程度減少することを要件とするものです。国からの利子補給で3年間無利子となります。売上高の減少が5%であれば、当初3年間は基準利率から0.9%を引いた低利融資をします。中小事業・危機対応においては1.11%が0.21%、国民事業は1.26%が0.36%となります。さらに、売上高が、小規模の個人事業主は5%減、小規模の法人は15%減、その他は20%減の要件を満たせば、利子補給を通じて当初3年間、実質無利子・無担保融資とします。なお、直近1か月の売上減少の要件については、直近2週間以上での比較も可能とされており、より柔軟な対応がなされている模様です。
実質無利子・無担保融資の上限額は、国民生活事業が6,000万円(8,000万円の融資枠との併用可)、中小企業事業が3億円(同じく6億円の融資枠との併用可)。利率は、融資を受けた当初3年間は実質無利子。いったん利子を支払う必要があるが、後に利子分が助成されます。
無利子借入は、ありがたい施策です。多くの中小企業がとりあえずやっておくという調子で飛び付きました。これから、計画的な返済をやっていきましょう。
2021/06/23 19:41:12
教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税非課税の改正
国税庁はこのほど、令和3年度税制改正による期限の延長と課税強化に合わせて、「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」を新たに公表しました。祖父母など直系尊属からの教育資金一括贈与の非課税制度は、適用期限が令和5年3月末まで2年間延長されたものの、贈与者が死亡した場合の残高は相続税の課税対象になるとともに2割加算の対象とする課税強化が行われています。
「あらまし」によると、契約期間中(信託等をした日から教育資金管理契約の終了の日までの間)に贈与者が死亡した場合、贈与者が死亡した旨を取り扱う金融機関等の営業所に届け出する必要があり、令和3年4月以降に非課税制度の適用を受ける人はもちろん、既に平成31年4月1日から令和3年3月31日までの間に非課税制度の適用を受けた人も、令和3年4月以後に教育資金として拠出する分は、その死亡の日までの年数にかかわらず、受贈者が23歳未満などの一定の場合を除いて、その管理残額を、その受贈者がその贈与者から相続等により取得したものとみなされることになります。
しかも、その受贈者が贈与者の子以外(孫など)の者である場合は、その贈与者の管理残額に対応する相続税額について、相続税額の2割加算の対象となります。「あらまし」にはこれらの適用関係と管理残額の計算方法を示しており、既に同制度を利用している納税者も令和3年4月以後の拠出には注意したいところです。
この税制は、創設当初は、制約がすくなく、使い勝手の良いものでしたが、あれよあれよという間に、課税のメスが入ってしましました。お客様にも勧めやすかったのですが、今後はしっかり説明します。
2021/06/01 10:26:23
泉佐野市の交付税減額訴訟
ふるさと納税により多額の寄附金を泉佐野市が得たことを理由に、総務省が同市への特別交付税を減額したのは違法であるとして、市が総務省に対してその取消しを求めた訴訟で、大阪地裁はこのほど、市の主張を認め、「法律上の争訟にあたる」とする中間判決を言い渡しました(令和3年4月22日・令和2年(行ウ)第66号)。これにより、特別交付税の減額が違法か否かなどの具体的な争点については、今後審理されることになりました。
総務省は、本件については、具体的な争点を審理する前に、特別交付税額の決定をめぐる不服申立ては行政内部で解決すべきものであり、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらないなどと主張しました。裁判所に訴えの却下を求めていたが、裁判所は「地方交付税法に訴訟提起を認めないという明確な規定はない」などとして総務省の主張を斥けました。一方、泉佐野市の訴えは「自治体の具体的な権利や法律上の利益に関する紛争にあたる」とし、裁判で争うことのできる事案であると判断しました。
泉佐野市はふるさと納税で多額の寄附金を集め、財政的に余裕があるとして、総務省は同市の令和元年12月と翌2年3月分の特別交付税を前年度から約9割減額しました。まさに「江戸の敵を長崎で討つ」かのような「懲罰の意図がある」として市が訴えた格好です。
ふるさと納税をめぐっては、周知のとおり、過去の寄附募集の方法に問題があったとして総務省が泉佐野市を含む4団体を制度から除外し、同市がその違法性を訴えた訴訟で最高裁が令和2年6月、国の除外決定を取り消す判決を言い渡しています。ふるさと納税訴訟と関連がないとはいえない本訴訟の今後の動向が注目されます。
今後の争点など注目です。
2021/05/23 16:37:29
食券の取扱いを追加
国税庁はこのほど、「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」に新たな設問を2つ追加し、在宅勤務者に対する食券(食事代)を負担した場合の取扱いを明らかにしました。FAQは今年1月の緊急事態宣言の発令に伴い、従業員に在宅勤務手当や在宅勤務時のパソコン使用や通信費等を支払う場合の課税関係を示したものです。
今回追加されたのは、食券の支給について。問8は、在宅勤務者の昼食の補助として会社が契約した特定の飲食店で飲食又は持帰りに利用できる食券を支給するケースで、それ以外の食事の支給はない状況です。結論からいうと、企業が従業員に食事の支給をする場合に、その食事の価額50%相当額以上、かつ企業の負担額が月額3,500円(消費税等の額を除く)を超えないときは、その従業員が食事の支給により受ける経済的利益はないものと取り扱われます(所得税基本通達36−38の2)。つまり、給与課税の必要はないです。同通達の「食事の支給」とは、契約業者から購入した弁当や社員食堂で食事を提供すること等をいうものですが、会社が契約した飲食店を前提に在宅勤務者に食券を支給する場合も容認しました。
問9は問8の応用で、在宅勤務日には食券、出勤日には契約業者から購入した弁当を提供するケースです。こちらも、従業員から食券の額面金額及び弁当の価額の50%相当額以上を徴収し、消費税等の額を除いた企業の負担額が月額3,500円を超えなければOKです。月額3,500円を超えた場合には、その月中に支給した企業の負担額の全額について、従業員に給与課税する必要がある点には注意したいところです。
事業主が従業員に良かれと思って食事を提供した場合に起こる事象です。税務調査で否認されると、忍びない気持ちになります。知っておきましょう。