2022/08/29 10:13:38
相続土地の浄化・改善費用相当額の控除
相続した土地の評価に当たって、その評価額から土地の浄化・改善費用相当額を控除できるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は、相続開始日に土壌汚染のある土地と認められることから、同相当額を控除すべきと判断し、原処分を全部取り消しました(令和3年12月1日裁決)。
この事件は、被相続人から土地を相続した審査請求人が、相続財産の土地は土壌汚染地であるとして、その土地の評価について浄化・改善費用に相当する金額を控除して相続税の申告をしたのが発端です。これに対して原処分庁は、土壌汚染対策法に規定する汚染の除去等の措置を講ずることが必要な区域に指定等がされていないため、これらの費用の負担が確実に発生するとはいえないとして更正処分等をしたものです。
審判所は、相続開始日に土壌汚染対策法上の基準を超える特定有害物質を地中に含有していたことが認められ、土壌汚染のある土地と認めるのが相当と判断しました。各土地の評価に当たっては浄化・改善費用相当額を控除すべきであると指摘しました。さらに、各土地やその周辺の状況、土壌汚染の状況から、各土地について最有効使用ができる最も合理的な土壌汚染の除去等の措置は掘削除去であると認められ、請求人が主張する土壌汚染対策工事の見積額の算定過程にも特段不合理な点は見当たらないことから、浄化・改善費用の金額として相当と認められるとの見解も示しています。
土地の評価について、実態に則した判断がなされたようです。土地評価の実務では、悩ましい事象は多々起きます。何度も現地へ行って、判断されたものと思います。
2022/08/24 13:18:05
副業所得、収入金額300万円以下は業務に係る雑所得
国税庁はこのほど、「所得税基本通達の制定について」の一部改正案(雑所得の例示等)に対するパブリックコメントを開始しました。意見の募集期間は8月31日(水)までです。
改正案は、かねてより所得区分の判定が難しいという指摘の多かったシェアリングエコノミーなどの「新分野の経済活動に係る所得」や副業に係る所得について、所得税基本通達における雑所得の範囲の明確化を図る改正となっています。
1つ目は、「その他雑所得」(公的年金等に係る雑所得及び業務に係る雑所得以外の雑所得)の範囲に、譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生じる所得(営利を目的として継続的に行う当該資産の譲渡から生じる所得及び山林の譲渡による所得を除く)が含まれることを明確化するものです。
2つ目は、「業務に係る雑所得」の範囲の明確化。業務に係る雑所得の範囲に、営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生じる所得が含まれることを明確化することとします。さらには、事業所得と業務に係る雑所得の判定について、(1)その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定すること、(2)その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱うこととするものです。
改正後の所得税基本通達の取扱いは、令和4年分以後の所得税について適用します。
副業が収入金額300万円以下の場合雑所得となると、今まで事業所得で申告していた納税者は、青色申告特別控除などの特典が使えなくなります。いろんなケースが想定されますが、厳しいですね。
2022/07/27 14:42:30
「男女の賃金の差異」の開示
女性活躍推進法の省令・告示が令和4年7月8日に改正され、「男女の賃金の差異」の公表が義務付けられることになりました。
対象は、常時雇用する労働者が301人以上の企業とされ、上場・未上場は問いません。「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の3区分での公表が必要であり、区分ごとに、「女性の平均年間賃金」を「男性の平均年間賃金」で割って、その割合(パーセント)を算出します。なお、「全労働者」とは「正規雇用労働者及び非正規雇用労働者」の合計であり、非正規雇用労働者にはアルバイト、パート、契約社員なども含まれます。
対象企業については、令和4年7月8日以後、最初に終了する事業年度の実績について、その次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に公表する必要があります。他の情報公表項目と同様に、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」や自社ホームページなどで公表します。
また、上場企業など、有価証券報告書を作成している場合には、従業員の範囲や平均年間給与の計算に用いる給与の範囲が女性活躍推進法における「男女の賃金の差異」の算出の原則に適合していれば、有価証券報告書における「従業員」の「平均年間給与」の算出方法を踏まえて、男女別の平均年間賃金を算出してよいとされています。
従業員の多い企業は、アルバイトの方の社会保険や この度の男女の賃金の差異の開示など制約が出てきています。
2022/07/21 17:32:41
「鬼滅の刃」制作会社がカフェの売上除外で有罪
人気アニメ「鬼滅の刃」などの制作会社が併営するカフェの売上を隠ぺいし、法人税等約1億4,000万円を脱税していたことが発覚した事件では、東京地裁は、代表者が経理担当者に執拗に脱税を指示していたなどとして悪質性が強いと判断し、有罪判決を下したことが分かりました(令和3年12月10日判決)。
アニメの制作などを業とするX社は、アニメ関連商品の販売やコラボカフェの運営等も手がけていました。代表者の甲は平成27年、29年、30年の3事業年度にわたり、カフェの売上金の一部を自宅に保管した上で、その分の売上を帳簿から除外し、計約4億4,000万円を隠ぺいしました。虚偽の確定申告書を提出して法人税・消費税等計約1億4,000万円を脱税しました。このことが税務調査で明るみになり、甲は起訴されました。
裁判で甲は、アニメ業界ではヒット作に恵まれることは少なく、将来、会社の経営が悪化した時に備えて資金を残しておくために、やむを得ず脱税をしたと主張しました。東京地裁は、甲の手口は巧妙とまではいえないものの、会計担当の妻が売上除外・帳簿改ざん等の行為に消極的だったにもかかわらず、執拗に実行の指示をしていることなどから、脱税の意思は強かったと指摘しました。また、経営悪化のリスクがあるのはアニメ業界特有の問題ではなく、正当な理由とはならないとして、その悪質性を認定し、X社に罰金3,000万円、甲に懲役1年8か月(執行猶予3年)の有罪判決を下しました。
鬼滅の刃で充分に儲かっているように傍目には見えるのですが、こういう事(売上除外)をしてはいけません。執行猶予のついた懲役となっています。
2022/06/23 19:07:23
外国子会社からの配当金の益金不算入を否認
外国子会社から受けた配当金を益金に算入せずに法人税の申告を行ったところ、制度の対象となる外国子会社には該当しないとして否認されました。大阪地裁は、株式の保有割合が25%に達していないとして、納税者の請求を却下しました(令和3年9月28日判決)。
X社はカナダ子会社A社から約6億円の配当金を受けました。X社は法人税法23条の2第1項の「外国子会社配当益金不算入制度」を適用し、配当金の95%を益金不算入として法人税の申告を行いました。課税庁は、A社が本税制における「外国子会社」には該当しないとして否認しました。X社はこの処分を不服として訴訟を提起しました。
法人税法施行令22条の4第1項2号は、「外国法人の発行済株式のうち議決権のある株式の数又は金額のうちに占める保有株式の割合が25%以上」という要件を規定していますが、この要件に該当するか否かが争われました。X社は議決権割合の26%を保有しているため、制度上の外国子会社に該当すると主張しました。
大阪地裁は、政令で定める「議決権のある株式の金額」とは当然に「株式の額面金額」を意味するが、X社が保有する株式は議決権があるものの額面株式ではないため、X社の「議決権のある株式の金額」は存在しないと指摘しました。結果として、A社は制度上の外国子会社には該当しないと判断し、X社の請求を斥けました。
この判決を見ると、実務において、外国子会社であると判断することが、大変難しいと言わざるをえません。もっと、シンプルに要件を整理していただきたいと思います。このままだとリスクが大きすぎます。